一般社団法人 呼吸研究 RESPIRATION.JP|雑誌「呼吸」by Respiration Research Foundation 


最新号 3巻2号



~~今月の論文(『呼吸』バックナンバーより)~~

呼吸31(1): 56 -61, 2012
講座 呼吸器臨床のコツ
     呼吸器疾患のバイタルサイン,理学所見,臨床症状の特徴
要旨  急性の症状はバイタルサイン,慢性の症状は身体所見に現れる。いずれも,解剖生理に基づいて理解すると合理的に判断できる。呼吸状態や身体所見で,肺機能の推定も可能である。バイタルサインでは,呼吸数,脈拍数が呼吸困難の原因の推定に役立つ。脱水,うっ血や心拍出量も臨床症状で判断できる。また血液ガスの状態も症状身体所見である程度推定できる。聴診では肺胞音と気管支音を区別する。副雑音ではウイーズ,ロンカイのような連続音は気道病変を示し,クラックルのような断続音は肺胞病変を示す。ウイーズを単音性と多音性に分けると喘息発作治療も容易になる。また,喀痰など気道分泌液の多いときに聴かれる低調な連続音(ドロドロ,ゴロゴロ)も人工呼吸管理には喀痰吸引やドレナージの指標となる。クラックルは背面に強く,ほぼ左右対称に聴かれればファイン・クラックル,局所的に聴かれればコース・クラックルとして鑑別を考えると間違いが少ない。

キーワード:   呼吸状態  脱水とうっ血  肺音  ウイーズ  クラックル
        図6 モノフォニック(単音性,左)とポリフォニック(多音性,右)ウイーズの サウンドスペクトログラム 解析
横軸は時間でそれぞれ10 秒ほどの記録である。縦軸は周波数(単位は kHz)で,音の強さは明るさで示す。単音性では1本だけの強い周波数バンド(最高で 400 Hz 程度)がみられる。多音性では呼気(やや持続が長い),吸気(やや持続が短い)ともに多数の周波数バンドが認められ,濁った音になることが分る。ウイーズの周波数は一定ではなく,変動することが特徴の 1 つである。



~~高齢者では血管内脱水と浮腫が同時にみられることも多い。舌は乾燥し,下腿浮腫を認める。この状態で利尿薬を使うと脱水が悪化する。肝の叩打痛や頸静脈怒脹がなければ利尿薬は不要で,動きの少ない高齢者は多少の足背浮腫があるほうが元気である。ただし,肺炎で呼吸状態が悪い場合は脱水気味のほうが肺の水分量も減り,安全に呼吸管理できる。~~
~~手が火照る,発汗,軽度の血圧上昇,羽ばたき振戦,傾眠や頭痛,縮瞳があれば高度の高炭酸ガス貯留を考える。~~
~~聴診は肺の様々な病態を即時に判断できる優れた診療技術である8)9)。肺の主な機能は換気とガス交換であるが,そこに出入りする気流の音から得られる情報は多い。肺胞の障害ではクラックルが聴かれることが多く,気道の障害ではウイーズがよく聴かれる。~~
~~肺音は正常で聴かれる呼吸音と,それ以外の副雑音に大別され,さらに呼吸音は肺胞音と気管支音に大別され,副雑音の大半はラ音で,断続性(クラックル)と連続性(ウイーズ,ロンカイ)に大別される。ラ音以外の副雑音には胸膜摩擦音などがある12)~~
~~モノフォニック(単音性)ウイーズ(図 6)は,比較的澄んだ単一周波数擬音であればヒュー,キューと表現できる。喘息では軽度の気道攣縮で聴かれ,β刺激薬の吸入で速やかに改善する17)。同じ部位で何度もウイーズ(モノフォニックに近い)が聴こえたら器質的な気道狭窄が起こっている可能性があるので CTで確認する18)。 ポリフォニック(多音性)ウイーズは濁った連続音で,ギューなどと表現できる。吸気,呼気ともに聴かれることも多く,気道炎症が強いことを示し,全身的なステロイド投与が必要である。筆者らの検討ではポリフォニックウイーズでウイーズを構成する音の要素が多いほど,また持続が長いほど気道炎症が強い17)。~~

本論文のPDFを閲覧する


What's News /お知らせ
2025.2.15 “ほっと『ひと呼吸』”に「大和路の帯解駅」を掲載しました。
2025.1.27 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“広島城 春”と“岡山城”を追加掲載しました。
2025.1.8 “ほっと『ひと呼吸』”に「源氏物語とゆかりの植物② 松(マツ) 」を掲載しました。
2024.12.20 “ほっと『ひと呼吸』”に「能登は陸の孤島 ―昔も今もー」を掲載しました。
2024.9.14 “ほっと『ひと呼吸』”に「源氏物語とゆかりの植物①フジバカマ(藤袴)」を掲載しました。
2024.6.20 “ほっと『ひと呼吸』”に「源氏物語とゆかりの植物-序章-」を掲載しました。
2024.2.15 “ほっと『ひと呼吸』”に私の科学史Wanderings(その1)-序章-及び(その2)-お玉が池種痘所跡(東京大学・医学部発祥の地)-を掲載しました。
2024.1.11 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“木曾路 妻籠宿”を追加掲載しました。
2023.9.12 『呼吸』バックナンバーに、未公開だった『呼吸』サプルメントをPDF化して掲載公開しました。「テーマ」のプルダウンメニューから「サプルメント」、「Asthma club in Sendai」、「Airway Club in Sendai」、「脂質メデイエーター研究集会」、「気道過敏性研究会」、「Onon Forum in TOHOKU」などを選択して検索してください。
2023.6.25 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“大島沖から見た富士山”を追加掲載しました。
2023.6.1 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“高知城”と“津城”を追加掲載しました。
2023.2.1 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の特別編「比叡山と京都府立植物園 とくに冬」を掲載しました。
2023.1.30 “ほっと『ひと呼吸』”の「スケッチによる旅の思い出」に“松本城”を追加掲載しました。
2022.11.7 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の新シリーズ“秋”の1回目「コダチダリア」を掲載しました。
2022.7.8 京都の祇園祭といえば、“ヒオウギの花”です。祇園祭とヒオウギについての解説を“ほっと『ひと呼吸』”の「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」に掲載しました。
2022.5.27 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」の新シリーズ“梅雨時の花木”を掲載しました。
2022.5.19 “ほっと『ひと呼吸』”に「スケッチによる旅の思い出」を掲載公開しました。
2022.5.9 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“「善福寺池」の上を泳ぐ鯉のぼり”を追加掲載しました。
2022.5.8 “ほっと『ひと呼吸』”に「あばた(痘痕)もえくぼ(靨) … ほうこ(奉公)さん …」を掲載公開しました。
2022.4.11 “ほっと『ひと呼吸』”の「くつろぎの時間の風景」に“井の頭池の春”を追加掲載しました。
2022.4.3 “ほっと『ひと呼吸』”の「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」に“キクザクラ(菊桜)”を追加掲載しました。      
2022.3.16 “ほっと『ひと呼吸』”に「松谷名誉園長が案内する京都府立植物園」を掲載公開しました。
2022.2.22 “ほっと『ひと呼吸』”に「ミリック-エミリ教授を偲んで」を掲載公開しました。
2022.2.18 “ほっと『ひと呼吸』”に「高尾山からみる富士山」を掲載公開しました。
2022.2.18 “ほっと『ひと呼吸』”の掲載を開始し公開しました。
2020.6.11 “今月の論文(『呼吸』バックナンバーより)”の掲載を開始します。
2020.4.1 本日より、本情報サイトの 管理・運営をインタージョイン株式会社が担当します。
2020.3.31 本日をもって一般社団法人 呼吸研究の法人組織を解散し活動を停止します。
2019.11.20 『呼吸』eレポート3巻2号を本日公開しました。
2019.5.20 『呼吸』eレポート3巻1号を本日公開しました。
2019.5.8 『呼吸』eレポート3巻1号を5/20月曜日に公開する予定です。
2018.11.21 『呼吸』eレポート2巻2号を本日公開しました。
2018.11.16 『呼吸』eレポート2巻2号を11/21水曜日に公開する予定です。
2018.9.25 『呼吸』バックナンバーをダウンロードするために現在ご使用されているユーザーIDとパスワードの有効期限は、本年12月末となっています。有効期間延長の手続きをお願いします。
2018.6.29 『呼吸』eレポート2巻1号に“解説 臨床”「臨床プロテオゲノミクスによる肺がんのプレシジョン医療」を追加公開しました。
2018.5.23 『呼吸』eレポート2巻1号を本日公開しました。
2018.5.19 『呼吸』eレポート2巻1号を5/23水曜日に公開する予定です。
2017.12.15 『呼吸』eレポート1巻2号に“総説”「新たな肺がん診断・治療戦略 ―PDTの可能性―」を追加公開しました。
2017.12.08 『呼吸』eレポート1巻2号に“解説 臨床”「日本人を対象としたCOPDスクリーニング質問票」を追加し、本日公開しました。
2017.11.29 『呼吸』eレポート1巻2号を本日公開しました。
2017.11.22 『呼吸』eレポート1巻2号を11/29水曜日に公開する予定です。
2017.11.06 『呼吸』eレポートのISSN登録手続きが完了しました。ISSN は、2433-5436となります。
2017.05.30 『呼吸』eレポート閲覧画面にズーム機能を追加しました。論文各ページの左上の虫眼鏡をクリックするごとに拡大率が変化します。
2017.05.24 『呼吸』eレポート創刊号を公開しました。
2016.02.22 事務所を移転します。現在の神田須田町から3月1日に、文京区本郷2丁目に移ります。引っ越し作業に伴い、メールが一時使用できません。また、電話も03-3257-6931から 03-5844-6530に変わります。
2015.12.16 『呼吸』Vol.34 No.12 が発刊されました。 12月号には、第43回箱根呼吸討論会記録がsupplementとして付いています。なお、『呼吸』はこれで休刊になります。
2015.11.17 12月15日発刊予定の『呼吸』Vol.34 No.12 で休刊になります。12月号には、第43回箱根呼吸討論会記録がsupplementとして付いています。
2015.11.16 『呼吸』Vol.34 No.11 が発刊されました。
2015.10.15 『呼吸』Vol.34 No.10 が発刊されました。
2015.10.02 『呼吸』はVol.34 No.12 で休刊となります。
2015.09.15 『呼吸』Vol.34 No.9 が発刊されました。
2015.08.17 『呼吸』Vol.34 No.8 が発刊されました。
2015.07.15 『呼吸』Vol.34 No.7 が発刊されました。
2015.06.15 『呼吸』Vol.34 No.6 が発刊されました。
6月号では、コロナウイルスの感染症 中東呼吸器症候群(MERS)について、「総説:いま、警戒すべき輸入ウイルス感染症」で解説されています。執筆は長崎大学熱帯医学研究所新興感染症学分野の 安田二朗先生です。
2015.06.03 『呼吸』Vol.34 No.6 が15日に発刊されます。長崎大学野の 安田二朗先生により中東呼吸器症候群(MERS)について、「総説:いま、警戒すべき輸入ウイルス感染症」で解説されています。
2015.05.15 『呼吸』Vol.34 No.5 発刊
2015.04.15 『呼吸』Vol.34 No.4 発刊

一般社団法人 呼吸研究解散のご案内
拝啓
 平素は一般社団法人 呼吸研究の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、一般社団法人 呼吸研究は本年3月に法人組織を解散し活動を停止することになりました。
 滝島任先生が初代編集委員長として、1982年9月に創刊された雑誌『呼吸』は、読者の皆様やご寄稿いただいた先生方など大変多くの方々からのお力添えを賜り、呼吸器学の月刊専門誌として、基礎から臨床にいたるまでの最新知見を読みやすい誌面でお伝えしていくことを目標に、刊行を続けてまいりました。その『呼吸』が諸般の事情により、2014年末に34巻12号で冊子体としての発行を休止いたしました。
 その後、『呼吸』編集委員会は、呼吸器関係の学術誌が限られた発行状況にあることを考慮して、『呼吸』バックナンバーのWeb上での閲覧を持続するとともに、電子図書『呼吸』eレポートの発行を行ってまいりました。
 しかし諸般の状況検討により、今後の活動継続は困難と判断し、法人解散の手続きを関係者の体力的に余力があるうちに実施することを編集委員会の総意として決定しました。
 法人解散後は、一般社団法人 呼吸研究が有していました『呼吸』等発行図書の著作権を公益財団法人 日本呼吸器財団に承継していただき、WEB上での “『呼吸』バックナンバー検索・閲覧システム”の維持運営と発行済『呼吸』eレポートの閲覧公開を継続することにしています。

 長きにわたり『呼吸』と一般社団法人 呼吸研究の活動にご支援賜りました皆様方には厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
 末筆ながら、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
敬具

2020年2月 
一般社団法人 呼吸研究
事務局 
ご案内
 旧一般社団法人呼吸研究に帰属していました『呼吸』等に関わる著作権は、2020年3月に一般社団法人呼吸研究が解散し、公益財団法人日本呼吸器財団に承継されていましたが、2024年4月から一般社団法人日本呼吸器学会に承継されることになりました。
 なお本サイトの管理、および本サイト上での“『呼吸』バックナンバー検索・閲覧システム” の維持運営はインタージョイン株式会社が行っています。
2024年4月 インタージョイン株式会社